地方がインバウンドを受け入れるのはまだまだ厳しいと思う。

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南房総・鴨川エリアインバウンド講習会に参加してきた

先日、南房総市観光協会と楽天トラベルが開催した「南房総・鴨川エリアインバウンド講習会」に参加してきました。

楽天トラベルのサイトでのインバウンドの設定方法や、各地でのインバウンドの事例、着地体験造成について実例紹介と、それに伴う、名前は忘れましたが体験をメインとした楽天絡みのサイトの宣伝などありましたが、既にインバウンドを受け入れているウチとしては目新しい物ではありませんでした。ただ、楽天の担当の方に初めてお会いして色々とお話できたのは収穫でした。

というわけでまあ南房総のインバウンドはこれからだなぁ、って感じの講習会だったのですが、逆に「もう条件さえ整えばインバウンドどんどん来ちゃうよ?大丈夫?」とも思ったのです。

ウチはゲストハウスという性格上、オープン当初から外国人の宿泊がありました。割合にすると1割程度ですが、ご利用いただいたゲストの国籍を列記すると、

  • アメリカ
  • イギリス
  • フランス
  • 中国
  • 台湾
  • 韓国
  • インド
  • ペルー
  • トルコ
  • ネパール
  • フィリピン

今思い出した限りこれら11か国の方を受け入れました。中には日本在住の方もいらっしゃいまして、それも含めていますが。
1年経たずにこれだけ受け入れた所、南房総じゃ珍しいんじゃないかと勝手に思っています。
まあ安房地域にはウチしかゲストハウスがありませんから当たり前っちゃ当たり前なんですが。

そしてこれら予約の半数以上が某海外OTAからで、残りは直接予約。ちなみに今回インバウンドセミナーを開催した楽天トラベルからは1件も来ていません(笑)。

というわけで、海外OTAやインターネットに掲載すれば、館山でも普通にインバウンドは来る時代になったのです。

このまま南房総がインバウンドを受け入れた時に厳しいと考えられること

南房総の地元民で英語が話せる人が激レア

実は私、11か国からインバウンドを受け入れたとか偉そうに書いてますけど、英語が話せないんです…
正確に言えば、日常会話程度の聞き取りなら半分くらいOKですが、聞き取れても半分くらい意味が分からない。そして何か話したくても単語は出てくるが、どう並べて良いかわからない。正直テレビでタレントの出川哲郎さんが話してるレベルの英語力です。
でもあれ笑えませんよ。むしろ果敢に知ってる単語と身振り手振りだけで会話を試みようとする行動力は、訪日外国人の増加や、今大問題になっている外国人労働者の問題などの課題がある今、英語を話せない日本人には今後絶対に必要になってくる能力でしょうから。現状は単語すら恥ずかしがって話せない日本人がほとんどだと思いますし。

中学程度で日常会話なら困らない程度の英語を習っているにもかかわらず、話せない。もうこれ教育が間違ってる気がしないでもないですが、今更そこに文句をつけても仕方ないですから、頑張るしかないわけです。

どこのゲストハウスのスタッフの求人にも、色々なサイトのゲストハウスを開業する条件みたいな項目にも、必ず書いてあります。

「英語が話せる事」

私も必須だと思います(笑)。私はお恥ずかしい話、いつも聞き取れなかったり通じなかったら、グーグル先生に丸投げです。
全く話せない人を0%、ペラペラの人を100%としたら、自己評価は15~20%って程度です。

いやでも本当にどこの求人や開業の条件にも書いてあるはずですよ、「英語が話せる事」って。開業して痛感しました。
現状でも必要最低限の事柄を伝える事は出来、大きなトラブルも無いので助かってますが、何か大きなトラブルがあったりしたら困りますし、何より話しかけて返答が来たは良いが、分からないところを聞き直したりグーグル先生に丸投げするのはゲストにも迷惑をかけますから、申し訳ない気持ちでいっぱいですよ。
せめて50~70%くらい英語がわかれば、なんで今回南房総を選んでくれたのかとか色々突っ込んで聞けるし、ゲストにももっと様々な情報をお伝えできる。そしてもっとインバウンドを増やすにはどうしたら良いかのヒントも得られるだろうし、次につなげられるのに、って。

まずこれが南房総でインバウンドを受け入れる際にネックになるだろう点ですね。私の周囲の地元の人間で英語が話せる、理解できるって人、ほとんどいませんもん。

そうなると仮になんらかのブレイクが起きて南房総にインバウンドが沢山来るようになったと仮定します。
そうすると地元民は英語を話せませんから、地元民の経営するホテルや旅館ではチェックイン手続きすらままならないでしょう。となると手っ取り早いのは英語を話せる人を連れてくる、つまりバイリンガルや外国人を雇うって事ですね。でも地元のホテルや旅館がそんなバイリンガルとか外国人を雇うツテも余裕もあるとは思えません。母体が東京とかの大企業だったり、都会から来た人の経営するデカいホテルとかなら出来るでしょうけど。
今外国人労働者受け入れについて宿泊業界からも要望が、とか言って大問題になってますが、アレ人手不足ってのもあるだろうけど、この辺の事情からの要望、ってか圧力なのかなぁともちょっと思ったり。詳しくないけど。

と言うわけで、南房総でインバウンドを増やしたいなら、まずホテル・旅館の経営者・スタッフが英語を日常会話程度は話せるようにならないと無理っす!という事です。私も含めて(笑)。
最近は翻訳機も出回っていますし、スマホでも翻訳アプリがありますが、やっぱり会話ってテンポが重要ですから、瞬時に翻訳して伝えてくれる物が出来るまでは、やっぱり人間同士の会話が重要な気がします。特にサービス業なんですし。

生活習慣、考え方の違いに房州人が対応できるのか

各国から来られる訪日外国人の方々、当たり前ですが日本人の常識とは違います。

日本人相手の旅館やホテルなら、黙ってたって日本人はやってくれる事も、彼らにとっては常識では無かったりします。

  • 土足で中へ上がる・裸足で外へ出る
  • 共用スペース目一杯に荷物を広げる
  • キッチンを占拠し料理作りまくり
  • 夜中に物音、いびき、話し声など音を気にしない
  • 出したものを仕舞わない・コップなどは次々出して使う
  • やたら扉やドアを開けて中を見ようとする
  • 電子レンジやポットの使い方が分からない
  • 宿にある機器や照明のスイッチなどを取り合えずいじる
  • Wi-fiが繋がらないとなぜか怒り出す
  • その辺にゴミを放置
  • 連泊が多く、日本人観光客と違い日中は1日宿にいる事も多い
  • 母国語が英語圏以外のゲストとは、ジャパニーズイングリッシュとお国訛りイングリッシュの応酬で悲惨な事に(笑)
  • 日本人ゲストが無意識に失礼な事を言う(笑)

平たく言うと良くも悪くも日本人よりは細かい事は気になさらない方の割合が多い印象です。

正直、上記の事例はゲストハウスにしてみれば、「普通」です。私も他のゲストに迷惑がかからない限り「しょうがねぇなぁ(笑)」で済ませ、ルールはその都度説明しています。あ、全員が全員こういう事をするわけではないですよ。こういう事がありました、という事です。
ウチはインバウンドが少ないんでエグいエピソードはありませんが、インバウンドが沢山来るお宿さんたちはかなり過激なエピソードもあるようですね。

しかし、これを外国人との関わりがほとんどない南房総の地元の人達、特にホテルや旅館の経営者やスタッフ達が「しょうがねぇなぁ」で対応できるとは思えないんですよね。絶対「外人が来ると面倒くせぇ!」ってなる気がするんですよね。理解不足から来るトラブルが多発する気がします。まだまだ田舎では外国人に対しての否定的な感情は根強いし。

あ、よくテレビでマナー云々と言われている「中国」ですが、団体で来るツアー客は知りませんが、ウチに来られた1~2人で旅をされている中国人の方々は素晴らしい方達ばかりでした!

という事で、「どうインバウンドを呼ぶか」とか「着地体験の造成」とかの前に、地元民、特に宿泊施設関係者が、「日本人とは違う」という事をまず受け入れる、という事をしないとトラブルになると思うんですよねぇ。
全部受け入れろという事では無く、マナー違反には毅然とした対応をするべきだと思いますし、日本ではこうなんだよ、と言うのも伝えて良いと思います。でもその際には、彼らのバックボーンにもちゃんと理解を示してあげないといけない。
そのためにはこちらも知識を持つ事と、やはり英語力・・・ですね(笑)。

これ房州だけの問題ではなく地方全般に言えそうです

訪日外国人旅行者数、2020年には4000万人になるとの予想です。
既にウチにも上記の11もの国からインバウンドが来ています。

正直、ゲストハウスをやっている私ですら、館山には外国人なんて来ないと思っていました。ところが蓋を開けてみれば少ないながらもコンスタントにインバウンドの予約が入る状況です。
そりゃそうですよね。日本人が1億2千万人、その中でコンスタントに旅をしている人は一体何人いるのか。一方訪日外国人旅行者はそれこそ「旅」をしに来た人たちです。2017年の訪日外国人”旅行者”数は2869万人です。凄い数字ですよ。そりゃ普通に館山にだって来ますよね。

彼らの辿るルートや観光する名勝は、日本人と何ら変わりません。館山の海を見て、里見八犬伝のお城に行って、安房神社や崖観音を参拝する。今はスマホで何でも調べられますから、良く知ってるし調べてらっしゃいます。わざわざインバウンド向けに着地体験だの何だのやる必要も無いんじゃないかとすら思います。

もう東京や京都に飽きた外国人達は、地方へと足が伸びているとの話も聞きます。そうなると今後は南房総のみならず、日本中の「地方」に外国人旅行者が向かうようになるのは時間の問題です。

ところがまだまだ地方では外国人は珍しい存在。全く関わった事が無い方も多く、まだまだ差別意識も根強い。館山ですらそうなんですから、更に地方へ行けばもっとでしょう。

なのでナントカ体験とかどこどこの成功事例が良いとかの小手先のインバウンド対策じゃなくて、観光に携わる地元民だけでも外国の事や彼らの行動にもっと知識を持って、差別的な意識無くとりあえずちゃんと対応できるようにする。英語がちょっとでも話せるようにしておく。これらをまずやらなきゃいけないような気がしています。

いやこんなの杞憂に終われば良いですけど、さすがに4000万人も来るとなると絶対トラブルになる気がして。

まあしかし、外国人労働者やら訪日外国人旅行者やら、なんだか「おもてなし」はどこいっちゃったんだよ、って感じですよね。どちらも「日本人いないから経済回すために外人頼み」って風にしか捉えられないんですよねぇ。

2020年、どうなりますことやら。

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