ゲストハウスはビジネスモデルとして30年早かった?

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ゲストとの交流って疲れますよ。

それゲストハウスオーナーが言っちゃうの?という身も蓋もない話になりますし、お前そんな事言うならサッサとゲストハウスなんか畳んじまえ!なんて意識高い人の意見も聞こえそうですが、どうせウチは閉店するゲストハウス、これで客が減ったってどうって事ありませんから書いちゃいます(笑)。よそのオーナーさんも絶対思ってる人いるハズですが、こんな事大っぴらには書けないでしょうからね(笑)。開業希望の方もこの辺は本当に知っておいて欲しいですから。

毎日違う人と交流する、多人数が交流しやすいように気を遣う、これとっても疲れるんですよ。

何年か前まで放送されていたお昼の有名番組「笑っていいとも!」でタモリさんが毎日違うゲストとトークを途切れさせずするのを見て、「すげえな」って思った事ありませんか?
私はアレが放送されていた当時、「よく毎日沈黙にならず話が出来るよなぁ」、と思って見てました。

あの番組は芸能人がゲストに来るわけですから、事前にその芸能人のプロフィールとか趣味を調べとけば、色々と各方面に明るいタモリさんなら話を膨らめていくのは容易なのでしょうが、それでも凄い。

ゲストハウスオーナーってタモリさんほどでは無いにせよ、それが求められる職種だと思います。しかも予め誰が来るか分かっている「いいとも!」の芸能人と違って、プロフィールも何も分からない方と初めて会い、二言三言話した感じでもうその人がどんな感じかを見極めて、その後の行動を観察してコミュニケーション方法を選ばないといけない。

まあ案内が済んだら受付にこもって、話しかけられたら応じればよい、って感じでも良いのでしょうし気を遣う必要もないのでしょうが、一応ゲストハウスを名乗ってますし、「ゲストハウス」を選んで来るお客様は、当然「交流」込みで選んでいるのでしょうから。お客様とお話するもの大切な仕事です。

とは言え夏の繁忙期などは、毎日違う方とお話し続け、消灯後にお客さんがお休みになると「一仕事終わった!」って感じでどっと疲れが出ました。

時にはお酒のお付き合いもします。私はビールが好きでビール以外は特に飲みたいと思わず、しかも強くは無いので缶ビール2~3本でも次の日ツライ時があるんですよね。しかしお客様からチューハイや日本酒をいただけばありがたく頂戴し、お話をさせていただき楽しく過ごしてもらえるようにします。

お客様が酔っていれば、危険防止のためベッドにちゃんと入るのを確認しないと私も寝れません。自分が酔ってしまっても仕事ですから気を抜くわけにはいかず、酔った自分を俯瞰的に見るようなイメージで、自我を保たなければなりません。そんなこんなで0時を回る事も多いです。それでもちゃんと7時半には受付を開けないといけませんので、結構大変です。

とは言えそんな生活も楽しいものです。たまに「疲れるな」と感じる事はありますが、これが嫌になっている訳ではありません。なんせ稼働率低いですから、それが毎日続くわけではありませんから。
ただ、稼働率が高いゲストハウスのオーナーさんなどは、毎日交流じゃ疲れるし嫌になるだろうなぁ、と考えたりします。いくら好きで始めたとは言え、一日のほとんどをゲストハウスのために費やし、頭をフル回転させて、時には肝臓もフル回転させてお客様が楽しい夜をすごせるよう交流をしていく。これは好きでも疲れますよ、絶対。

ゲストハウスは交流を「ウリ」にする割に「売り」はしていない

以前「他の旅人とか宿主と交流が出来るから高くても良いや。なんてお客様が思ってくれたら儲かるのに、なんて事を半分冗談で書きましたが、これと同じような事を当たり前にやってそれなりにお金を取る職種がありますね。そうスナックやキャバクラ、ホストクラブと言った「水商売」ですね。

お酒を飲んで、キャストとの交流を楽しむ。そこには高いお金が払われます。誰も「酒飲んで話してるだけで何でこんなに金取るんだ!」とは言わないですよね。皆さんそれなりの金額を払って楽しい時間を過ごしています。

交流する「場所」を提供するという事なら、居酒屋・レストランなどもそうですね。あれだってそれなりに上乗せされた金額を払います。もちろんその中には「場所代」が含まれますね。

ところがゲストハウスとなるとどうでしょう?その宿のオーナーは当たり前に交流を求められます。お客さんが増えてくれば、それぞれが交流しやすいように気を遣ったりもします。ところがそこに金銭は一切発生しません。それどころかゲストハウスは「安宿」のイメージまでウリにしています。
皆ゲストハウスオーナーは好きでやっているんで気にしていないでしょうが、この「人との交流」というのは実はマネタイズされても良いものなのではないでしょうか。

自動化された世の中での「人との交流」の価値

これから少子化で人手不足なので、今まで人がやっていた仕事で置き換えられるものはどんどん機械化、自動化されるでしょう。スーパーのレジなどはすでにセルフ式がメジャーとなり、ホテルも無人でチェックインできる所も出てきたようです。

近い将来、人口減少が進み極度に自動化・ロボット化され効率化が果てまで進んだ日本で「一人旅」をする場合に想定される事。
キャッシュレスで駅の改札を通り、無人化された自動運転の電車に乗り、目的地に着いたら自動運転のバスやタクシーに乗り観光する。観光地ではAIが搭載されたロボットが名勝案内をし、各自の持つ端末に自動でその観光地の情報が届く。その中から選んだ無人のレストランで食事し、お土産物屋でお土産を選ぶと、そのお土産は自動的に自宅の宅配ボックスに配送される。そして事前決済しておいた無人チェックインのホテルや旅館に泊まる。お店もルートも名産品やお土産まですべて自分の端末に表示されるので迷う事も無く、地元の人に道を尋ねたりおススメを聞いたりする事も無い。地元の人だって観光客など眼中にない。

観光地の食堂やお土産売り場では地元のおばちゃんでは無くロボットが呼び込みや案内をし、ホテルも旅館も受付は無人でロボットが食事を配膳し、AI搭載ロボットがホテルマンや仲居さんのかわりに動いている。

そんな中、一人旅の人たちが集まり、受付にもちゃんと人が居て、あれこれ地元の事など案内してくれ雑談にも応じてくれ、わいわいと人の気配が感じられるストハウス」がある。
コレは金払いたくなるでしょう!

そう考えると、「ゲストハウス」というビジネスモデルは30年くらい早すぎたのかもしれません。

今も都会では人との関わりが希薄で、人との交流を求める層があるだろう事は想像できますが、そんなのちょっと田舎に行きゃウザいくらい交流できますから、田舎のゲストハウスがそれをウリにして価値を見出してもらうにはまだまだ早すぎる。

好きじゃないとやれないけど、好きだけじゃやっていけない

先日とあるゲストハウスの譲渡のお知らせを目にしました。その中に書かれた譲渡の理由が、「ホステルは泊まって楽しみたい」、「一部の国の客の対応に疲れた」と書いてありました。
一見すると「え?そんな理由?自分の選んだ仕事でしょ?」なんて感じてしまうような理由ですが、今現在ゲストハウスを経営する私は、きっとこのオーナーさんは、自分が泊まって楽しかったホステルを再現して、旅の人にも同じ楽しさを提供したいとものすごく頑張ったんだろうな、疲れたろうな、やり切って燃え尽きたのかもな、というのを感じ取りました。
もしその「楽しさの提供」にもっと世の中が価値を認めてくれていたなら辞めなかったのかもしれません。あくまで私が感じただけで、実際は分かりませんけどね。

人と交流し楽しませるっていうのは、想像よりはるかに大変なんです。コミュニケーションでは無く一方的な押しつけなら簡単ですけど、それじゃお客さんは二度と来ませんから。その大変な事をマネタイズせずに提供するんです。好きでないとやれませんね。開業を目指す方は是非その辺りも考えてやってみてくださいね。
私がうまく出来てるかと言われるとそんなに自信はありませんが、一応ブッキングドットコムのレビューでは「スタッフ」の欄の得点が10点中9.2点で、コメントでも褒めてくれている方もいるので、及第点以上ではあると思っています(笑)。

という事で何とか30年後もこの形態のゲストハウスが残り、そしてそれなりに価値を見出されていると良いですね。

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