ゲストハウスのドミトリーは今後淘汰される?どころかゲストハウスが淘汰される?

これからはゲストハウスのドミトリーは厳しい?

先日twitterでチラッと見た中に、今後ドミトリーは厳しくなり、ツインの部屋が良いでしょう、といった意見がありました。

発言していた人たちはゲストハウスの経営者さんだったと記憶しているのですが、確かにそうかもと思う反面、ウチは逆の事(ツインをつぶしてドミトリーに変更)したなぁ、とも思ったんですよね。

ウチがツインを潰してドミトリーに変更した理由

館山ウィールズゲストハウスは最初、1つのドミトリーと2つのツインの客室でオープンしました。その後6月の旅館業法改正を受けて、2つのツインを通し間にして、4名ドミトリーへ変更しました。ツインを潰した理由はいくつかあって、

  1. ゲストハウスを知らない人、仕方なく泊まる人が来る
  2. 繁忙期に1名での個室利用があると、単純に収益が下がる
  3. ゲストハウスなのにドミ3人個室4人じゃバランスがおかしかった

という所だったのです。

2番3番は確実にこっちの事情ですが、1番はどうにもなりませんで。

1番についてですが、2人組で旅行されるお客様は確かに多いです。収益になります。でもゲストハウスなんだから一人旅の方を優先したい!と思ったのです。ならなんで最初にツイン2室も作ったんだよ、って言われそうですが、完全に私の見通しの甘さです!

最初の頃は、安いから寝られれば良いよという方とか、ビジネス利用の方などいらっしゃり、私も最初なのでやや意識高い系になってた面もあって、「ウチじゃ無くてよくねぇ?」なんて思ったりしてたんです。もちろん態度には出してませんよ?
そのうち子供連れの方にまだ早い時間に静かにしてくれと注意されたり、子供も金取るんですか?みたいな客まで来るに至って、こりゃツイン要らねぇや、ってなっちゃったんですね。
ゲストハウスじゃ無くてもいいようなお客さんが泊って双方が嫌な思いするわ、そのせいで本来ゲストハウスのターゲット層であろう一人旅の方が泊れないってんじゃ、何のためにゲストハウスやってんだろう、ってなりまして。


最初にあったツイン洋室


こちらはツイン和室

これをぶち抜きでドミトリーに
 

ツインは廃止したけれど、やはりツインは必要かも

結局ツイン廃止、子供NGにしたもんだからそういったお客さんは来なくなりましたが、最近は逆に私の意識も変わりすっかり慣れちゃって、どんなお客様だろうがどんな理由でいらっしゃろうが平気で声をかけ、多少の事は笑ってすませ、目に余れば平気でお客様に意見したりできるようにもなって図々しく接客をしています(笑)。なのでまた個室作っても良いかもな、なんて思い始めたり。
ゲストハウスは好きだけど、泊るなら個室がいいって方、特に女性のお客様に一定数いらっしゃるので。

また少なくない頻度で2人組のお客様同士が交流されたりする事もあり、最近はゲストハウスというものを完全に理解されて、敢えてゲストハウスに2人組で来られる方も増えつつあり、そうなってくるとやっぱり個室必要ですね。

地元の人や旅人同士で交流はしたいけど、何も寝る時まで一緒じゃなくていいよ、って人や、ゲストハウスは好きだけど、ドミは周りに気を遣うからちょっと、って人多いみたいですし。

ゲストハウスだからこそお客様が期待される事に応えたいが…

ツインの話と関連して、今でもたまーにドミ一部屋貸切で家族連れや団体を受けたりする事もあるんですが、そんな時共用スペースで寂しそうにしている一人旅のお客様を見ると、やはり小規模ゲストハウスで複数人は取っちゃダメなのかなぁ、なんて考えたりもします。

団体さん、閑散期にはとてもありがたいんですが、ゲストハウスなんだから繁忙期はやはり一人旅を優先したいですね。ドミトリーのお客様たちでワイワイガヤガヤやってる日なんかは、本当にホッとします。あー皆さん楽しそうで良かったー!って。

まあ交流にフォーカスを当てる必要も無いのかもしれませんが、一応ゲストハウスを名乗る以上、お客様には一般的にイメージされる「ゲストハウス」って物をご提供したいな、と思ってまして。
そこには当然1丁目1番地で「お客様同士の交流」ってのが入りますから、悩みどころではあるんですよねぇ。

まあウチがドミトリー10ベッド、個室2部屋4ベッドくらいの規模だったら、何も悩まないわけなんです。全定員7名っていう、超絶狭小ゲストハウスなのがいけないんです。館山にゲストハウスも増えるみたいだし、こりゃ借金して箱替えかな(笑)。

かといって借金してデカいところへ箱替えなんて、20代のキラキラした夢追い人ならいざしらず、実際にゲストハウスを経営して実情を見てしまったアラフォーおじさんはリスクを取って突っ走れません!

今まで交流を期待してウチに来ていただいたお客様たち、本当に申し訳ございません!でも交流したくて来られるのもお客様の自由ですし、寝るだけで良い、交流はしません、っていうのもお客様の自由なんです。これは宿側が強制して良いものでは無い。

そいったニーズに応え切れていない、ウチの宿の至らなさなワケです。

どっちにしろこれからは個人経営ゲストハウスは厳しくなる?

そもそも交流うんぬん以前に、お客様の旅のスタイルは本当に多様化し、宿側が想像もつかないような理由でいらっしゃる方が多く見えます。
先日いらっしゃったアメリカ人ゲストが館山に滞在した理由が、「日本にはタテヤマが二つあるから、まず千葉の館山に来たんだ。」とおっしゃっていました。
こんな理由館山の人間が考えつきませんよ!

もうゲストハウスはグダグダ意識高い事言わずに、快適な宿泊環境を安く提供してれば良いだけの存在でも良いんじゃないか、とすら思います。遊び方、滞在の仕方はお客様が決めますから。
そうではなく意識高い事を提示するなら、とびきりぶっ飛んだ、お客様が本当に来てよかったと思えるような体験を提供してあげないと、もう淘汰される時代がすぐそこまで来てる気がビンビンします。

こうなると残るのは大人数を収容できる超絶キレイな大手デカ箱ゲストハウスか、超絶個性的な宿泊する事がまるでアトラクションのようなゲストハウスのみ、苦しいゲストハウスは従前の交流メインの一人旅向け、ってのを一旦忘れてドミをツインへなんて風に改装していく・・・なんて気がします。

旅行者への「ゲストハウス」の浸透度の凄さ

開業から半年経ち、沢山のお客様とお話させていただいて、こんなにも日本にゲストハウスってものが根付いているんだ、というのを本当に実感しています。折からのゲストハウスブームで全国津々浦々にゲストハウスが乱立し、ハイクオリティなゲストハウスがリーズナブルな価格で宿泊できる。そうなるとお客様の期待値も当然上がってきます。

コモディティ化が問題だ、なんて意見も最近多いですけど、日本で商売する以上お客様が求めてるのは安くて良い物、になるわけですから、これもう仕方ないですよ。

いかにも元和室、ってとこに市販の二段ベッドを並べたスタイルとか、和室に雑魚寝のドミ、これもうそろそろ通用しなくなりそうですよね。
前述の続きになりますが、2人組でドミに泊る方が増えています。もちろん二人ともゲストハウスとはこういう物、という知識をちゃんとお持ちで、他のお客さんたちと共用スペースで談笑している。でもこういう方たちだって、ツインがあればそちらに泊まるでしょう。

今は館山には競合店が無いので、ウチの和室にパイプベッド全開なドミでもお客様はいらっしゃってくださってますが、今立ち上げ中の競合ゲストハウスさんたちがイマドキなカプセルホテル式のベッドのオシャレなゲストハウスなんかお作りになられた日にゃ、ウチは撃沈ですわ(笑)。(一応二段ベッドは上下で別々のベッドとして振動が響かないようにしたり、マットレスは高級品を導入し寝心地のよさを考えたりはしてるんですよ。お客様からは結構評判良いんです。)

で、若い女性へルパーさんなんか接客に立たれたら、どう考えたってこの田舎モンアラフォーおじさんゲストハウスの勝ち目は無いしw むしろ俺がそこ泊まり行く(笑)。

日本的なコモディティ化の前にはゲストハウスといえど例外はない

冗談はさておき、日本のゲストハウスが行き着く先ってのが段々見えてきたような気がします。

結局日本人にドミトリーは合わないんでしょうね。ゲストハウスってものがキャズム超えた感がある現状、最初にゲストハウスを根城にしていたアーリーアダプターと言えるバッパーやライダー達は気にしなかったのでしょうが、もはや普通にゲストハウスをホテルと並んで宿泊施設の候補に入れてくるアーリーマジョリティのお客さんたちは、あのパイプベッドドミはちょっと…となるでしょうし。それどころかドミ自体ちょっと、って意見も見かけますし。
その結果が今増えている半個室タイプのベッドや、カプセルホテル式の階層ベッドでしょう。ちゃんとカーテンやシェードで目隠しできるようになってて、個室としてプライバシーが保たれるのは必須ですよね。
今新規開業するところで、和室にパイプベッドなんてとこ多分無いでしょうね。
当然設備投資に金がかかりますね。

コモディティ化の波、ついにゲストハウスにも来ましたね。ゲストハウスのチキンレース、始まりました。
数年後、気が付いたらゲストハウスは日本独自にガラパゴス化(ドミなのに個室化、ツインルームのみなどなど)した大手のデカい箱だけが生き残り、その時お客様たちは思い出すんでしょう。

「そういや10年くらい前は民家の和室にパイプベッド並べたゲストハウスばっかりだったよねぇ。古民家で雑魚寝もしたよねぇ。あれもあれで風情があったけど、当時やってた人達、今何やってんのかなぁ。」

って(笑)。

つまり今後のゲストハウスは?

今回何が言いたかったのかまとめると、

  • ゲストハウスという物がキャズムを超えた。黎明期の交流目的の層にはウケたドミトリーも、その後流入してきた普通の旅行者には馴染まなかった
  • そもそも儲からないのにバンバン新規で増え続け、コモディティ化が激化。日本全国で生き残り合戦に突入した
  • 今後残るのは大手のデカい箱か人気宿のみ。その頃にはガラパゴス化し、今言われているゲストハウスという形態とは違うものになってるかも
  • 10年後、今の形態のゲストハウスは2010年代の徒花扱いになるかも

って事ですかねぇ。

結局形は違えど、ここ数年のゲストハウスブーム、バブル期のペンションブームの再来だっただけなのかもしれませんね。
さあウチはこれからどうしましょうかね。和室のパイプベッドドミトリー、10年後にはラブホの回転ベッドみたいに「平成レトロ」なんて言われてリバイバル来るかな(笑)

ほんとこれからを考えて行かないと・・・