なぜ私が「地域おこし系ゲストハウス」が嫌いなのかを考えてみた

ゲストハウスとなぜか密接に結び付く「地域おこし」

このブログでも散々意味が分からないと書きつづっている、「ゲストハウス≒地域おこし」な昨今の風潮。

いやゲストハウスですから、一応宿泊施設、観光産業には違いないので、「地域」をウリにするのは大いにアリです。ウチも宿名に地名を付けてるくらいですから。
その地域へ来られる旅人は、その地域の何か名物だったり、ランドマークだったり、コンテンツだったりを求めて来られる事が多いでしょうから、その「地域」の中にあるゲストハウスも地域の空気感を押し出して商いをするのは大切だと思います。必須では無いですけどね。←ココ重要

でも「地域の空気感」を漂わせてるゲストハウスと、「地域おこし」に躍起になっているゲストハウス、これは似て非なる物どころか、同じ「ゲストハウス」と言っても全然違う物です!

なんで猫も杓子もゲストハウスは「地域おこし」なのか。これについてちょっと私なりに検証してみようと思います。

要因1 某開業セミナーやインフルエンサー的な人達が吹聴した影響

まず思いつくのがこれですね。念仏のように「地域」「地域」と唱えるこれらセミナーや媒体によって、こういうイメージが付いてしまったと言うのは大いに考えられます、ていうかこれしか原因ないと思います(笑)。

某開業セミナー、某ゲストハウスサイト、某ブロガーなどなど。

それを受講したり読んだりと「通った人」は、その「ゲストハウス≒地域」フィルターに染まりますから、当然そういう方が開業するのは「地域とのウンタラ」をウリにしたゲストハウスだったり、そこを通った方たちが泊まりに行ったりする所は「地域推し」のゲストハウスだったりするワケです。でもそれがこんなにも支持されるのにはこれだけじゃないワケがありそうです。

要因2 「地域に漠然とした憧れ」がある人や、「俺が地方を変えてやる」な意識高い系の跋扈

上記要因1に書いた「地域」系セミナーですが、それだってただ漠然とやってたって受講者や読者は付かないわけであって、そういう物に引き寄せられる素地を持った人達が一杯いるからこそ繁盛してこの現状なワケです。

よく東京で生まれた人達が、「田舎に実家がある」という事に憧れるとか言います。地域地域言う人はあの延長線上なんじゃないかな?と思ったり。

「地域」に憧れる人の考察

田舎への憧れ、田舎は落ち着くなどのよくありがちなイメージの上に、何か強烈な田舎への想いが芽生えてしまう事柄があると、人は田舎暮らしに突っ走るのかもしれません。

それは「農業をやってみたい」だったり、「都会に疲れている時にたまたま行った地方でとても快い思いをした」とか、「子供を伸び伸び育てたい」だとか、まあ色々ありそうですが。

遠くに見える野山と入道雲、暑い夏の日、泣く蝉の声、田んぼ道をアイス食べながら自転車に二人乗りして、空からキラキラ降り注ぐ太陽・・・こんな「ぼくのなつやすみ」みたいな情景、田舎に住む私でも「良いなぁ」って思いますからね。やっぱ田舎への情景ってのはデカいですよ。

実際田舎に住んでると、あんな情景無いですけどね。入道雲や田んぼ道は腐るほどありますが、あんな美化されたものはありません。
現実はどこからともなく漂う肥料や牛の糞の臭い、野焼きやゴミを燃す煙の臭い、国道を大名行列を作りながら走る軽トラやスーパーカブ、気が付くと服に付いている虫や草の実。突然顔面に襲い掛かるクモの巣、突然絡んでくる地元のオッサンなどなど・・・田舎のおばあちゃん家、古民家なんて物は言いよう。現実は線香クサい汚い虫だらけ、夏は暑く冬は寒いボロ家ってのが現実です。

マンガのような白いワンピース着て麦わら帽子被ってアイス食いながら男の自転車の後ろに横乗りしてる都会から来た女なんて見た事ありません。いるとしたら幽霊かなにかでしょうし、家に着く頃には溶けたアイスと自転車の後輪への巻き込みでそのワンピースはドロドロになっている事でしょう。
縁側でのんびり犬とスイカ食ったりもしません。縁側から田んぼなんか見ても面白くないですから。なにより蚊に食われますから、網戸は必ず閉めてます。スイカはちゃんとテーブルで食うか、外で食うならその辺に種をぺっぺっと吐き出し、食べ終わった皮は草むらへ「ポイ」です(笑)。

くだらない余談が長くなりましたが、そういった「田舎への憧れ」からの「地方への想い」、情景や憧れが積もり積もって、「私ものんびりキラキラした田舎暮らしがしたい!」分かります分かります。

そんな想い、夢の実現手段としてメジャーだったのが、昔なら脱サラして「農業」「カフェ」「ペンション」だったのでしょうが、ちょうどそこに折からのブームであった「ゲストハウス」というものが、これもまた最近良く言われる「お試し移住」なんてのにピッタリハマって流行ってしまったという所でしょう。

都会の喧騒を離れて、のんびり田舎でゲストハウスをやって、旅人たちとほっこりする交流を持ちながら憧れの田舎暮らしスタイル。憧れるんでしょうねぇ。現実はそう甘くないんですが(笑)。

「俺が地方を変えてやる」な意識高い系な人の考察

上記で田舎に移住する人を「何か強烈な田舎への想いが芽生えてしまう事柄を持った人」、と書きましたが、今、若者から中年まで一定数見られる「意識高い系」、この手の方がこの強烈な思いを持つと、「俺なら地域を盛り上げられる」とか思いこんじゃうんじゃないかと。

最近よく見ますよね、承認欲求のカタマリみたいな人。自分が何者かになりたい人とでも言うべきか。「インフルエンサー」なんて人達の出現がそれを助長しているきらいもありますね。

そして何故かこの手の人達は「地域おこし」をしたがる傾向があります。それもナチュラルに上から目線で「田舎」とか言って地方をバカにしてる。

そしてこういうキラキラした人は大体「起業」したがります。そこに折からの「ゲストハウスブーム」。こりゃ飛びつきますよ。

そして意識高いとまではいかなくても、地方で何だか楽しそうにやってると、一枚噛みたくなる人も沢山います。人間何かの組織に所属し、何かに関わるのは承認欲求も満たされるし楽しいですからね。

そういった人達は考えました。
「ゲストハウスとかどうだろう?旅人が集まれば盛り上がる、周辺にも波及効果がある。」
関係人口とかいう言葉がやたら聞かれるようになりました。

はたから見てれば何だか楽しそうですもんね、ゲストハウスって。現実は地味な仕事の連続で、メンタルもゴリゴリ削られるサービス業だってのに。

地域の魅力を…、地域と旅人が交差する場づくり、交流…、地域と生きる…、あーーーーウゼぇwww

前述のセミナーはじめ、こうした地域おこしにからめたゲストハウスの事例はゴマンと転がってます。地方で大繁盛してるゲストハウスもいくつかあり、メディアやブロガー達が盛んにプッシュし話題となります。

そういうのに影響されて「俺もいっちょ田舎盛り上げたるゼ!」になっちゃうキラキラ野郎とその取り巻き連中はこれからも続々と現れるでしょうね。

でもその通りにはいきませんよ。だって地元の人達は所謂「田舎暮らし」なんてのは望んでません。早く都会みたいにお店が沢山出来て、道路が通って便利になって欲しい。緑が多いとか星が見えるとか海がキレイとかマジどうでも良い。草刈りとかしなくてすむなら舗装したい。虫もいなくなるし。別に5年10年で町が無くなるワケじゃないし、地域おこしとかどうでも良い。むしろ人が増えたらウザい。これが本音ですよ(笑)。空回りするでしょうね。

ホステル・ゲストハウスって誰のための施設だっけ?

もう簡単にいっちゃうと、そのゲストハウス、誰のためにやってんのよ?って事ですよ。

まあ一番の理由である「自分の生活のため」ってのは当たり前すぎるんで置いておいて(笑)、ゲストハウスなんですから、本来は「旅する旅人のため」の宿ですよね。これに異論を唱える人は居ないはずです。

でも「地域おこし系」の宿の考えって、多分「旅人」を「旅人」として見ていませんよね?
地域経済に貢献するイチ因子、「地域」の事を刷り込んで、色々な所で宣伝してくれる宣伝マン、何ならそのままその地域に興味持って移住してもらったり嫁に来てもらえれば最高!って思ってますよね?そのためにせっせと来てくれた旅人に地域アピール。
そんなんゲストハウスじゃなくてアリ地獄と名乗るべきじゃないですか?www

今流行りの「関係人口」なんて言葉が、正にそれを端的に表しているんだと思います。いや地方創生的、政治的な目線から見れば、概念としての関係人口という言葉に特段変な意味はありません。
しかし、ゲストハウスをやっている宿主が旅人の事を「関係人口」なんて目で見た時、そこには「客を我々地域のために利用してやる」という意識があるわけです。多分やってる方は無意識なんでしょうし、地方創生という金科玉条で物凄く良い事をしていると信じ込んでいるでしょう。でもそれ、「旅人への押しつけ」ですよ?

地域へ旅に来られる旅人は、その地域に行きたくて来てるわけで、別にその地域をおこしたくて来てるんじゃない。そこへ「地域」の押し売り&「交流」の押しつけ。良い迷惑ですよねぇ。ほっといてくれよ、と。

今旅行に来られる方々はネットで見て、スマホで調べながら旅をしています。ウチに来たインバウンドのゲスト達ですら、こんな外人のいない南房総に単身乗り込んで来て、まるで日本人が行くようなルートを巡って旅をしています。それも外房から流れて来たとか、東京からたまたま下ってきたとかじゃなくて、「南房総」に行きたくて来ています!
その証拠にウチに来る前は石川県に居たとか、富士山登山してたとか、次は京都へ行くとか富山へ行くとか言うんです。わざわざ日本全国の中から「南房総」を選んで来てくれたんです。これだけで百万回くらいありがとうと伝えるべきです。そんなありがたい人達にグダグダグダグダ地域地域地域地域…と押し付けたら、「NO THANK YOU!」ってズバッと言われちゃいますよ。一気に地域のイメージは地に落ちます。
これは日本人だって同じですよ。

あ、ここまで超絶否定的に書いてますけど、一定数地域おこしに協力したいって人はいるし、商売として地域おこしを絡めて宿をやっていただくのは全然OKだと思います。私が嫌いってだけで、それをやる事自体を否定はしません。あくまでここまでは私の個人的な見解です。全然やってもらって結構。少しでも地域が上向けば良いですね。

ただしそれをやるにあたり、

「ホステル」「ゲストハウス」って言葉を使うんじゃねぇ!

ホステルやゲストハウスは旅人のための宿という意味です!地域おこしの拠点という意味はありません!

やっと私の怒りの源にたどり着けた(笑)

そう私がイラついているのは、「地域おこし」ではなかったんです。確かに地元民として「地域おこし」という言葉にあまり良い印象はありませんけど、「まあやるならどうぞ。私はやりませんけど。少しでも経済上向くと良いですね。」程度の認識です。

しかしその「地域おこし」系の連中が「ホステル」「ゲストハウス」という言葉を使うとなると話は別です。「誰のためにソレやんの?」って。

以前も書きましたが、私は文化が冒涜されたり、文化が背景を理解しない連中の金儲けに使われるのに否定的です。この「地域おこし≒ゲストハウス」問題は金儲けではありませんが、地域振興という特定の狭い地域の「利益」のために「ゲストハウス」が使われるという点で金儲けと同じでアタマに来ます。

「ゲストハウス」「ホステル」を名乗るという事は、旅人たちへのアピールです。
バックパッカーやライダーといった旅人というのは、束縛を嫌い自由を愛します。そんな旅人たちへヘンチクリンな押しつけお節介はマジで勘弁してもらいたいですよ!

あなたの地域の都合でしかない地域おこしとやらに、旅人たちを巻き込まないで下さい!

ガソリンスタンドへ給油に来たのに、なぜか店員から地域についてグダグダアピールされたら「は?お前んとこガソリン売るのが仕事だろうが?」ってなるでしょう。これが「給油もできる地域案内所」だったら誰も文句言わないでしょう。
同じ事で、一人旅で疲れて入ったゲストハウスで、なぜかグダグダ地域について聞かされたり交流を強制させられたら、「何言ってんの?早くみんなと楽しく酒飲んでゆっくり寝たいんだが…」ってなりますよ。これが「地域おこし交流宿」って名前だったら、旅人もそうは思わない、選ばないはずです。

やるなら違う名前でやってください!!そうすれば旅人は来ません。そのコンセプトに同調した方たちが来ますから、思う存分地域おこしできるでしょう。

ホステルやゲストハウスはあくまで「旅人」のための安宿であり、そこに色々な機能を盛り込むのは結構ですが、その根底にある「文化」を踏みにじる事はしないでいただきたい。

ゲストハウス業界の末席を汚すものとして、そう切に願うばかりです。

『なぜ私が「地域おこし系ゲストハウス」が嫌いなのかを考えてみた』へのコメント

  1. 名前:TateyamaWheelsGuesthouseヤシロ 投稿日:2019/02/08(金) 23:12:53 ID:ebad83922 返信

    2019/2/8
    コメント欄に貴重な情報が多々含まれていたため、コメントはユーザー限定記事としました。